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2014年4月30日水曜日

恥の日 (韓国の船舶事故と日本の原発事故)

4/16に起きた韓国の船舶事故について連日、大きく報道されている。

先日、韓国メディアがこの日を「国恥の日」とすべきと論じている、というニュースがあって、
思いっきり感心した。「後進国」並の事故を起こし、多くの若い命を犠牲にしたことを
国の恥として反省し記憶せよと言っているという。

日本のメディアも毎日、ずさんで無責任極まりない事故の顛末を解説し、
登場するコメンテータの誰もが事故の経過の異常さやおかしさを歯に衣着せず
批判しまくっている。
経済を急成長させた韓国での人命を軽んじた経済至上主義やモラルの崩壊を批判したり、
船舶会社がカルト宗教と関係があり政府とも癒着してきた、なんていう情報も伝えられている。
コメンテータの批判はおおむねどれも正しい。
せめてこの悲惨な事故から教訓をしっかり学び、決して同じことを繰り返さないでほしい。
誰もがそう考えるのは当然だ。

で、ひるがえってこの日本。
3年前の福島原発事故は大事故なんてものじゃなくて世界史に残る規模の超大事故だ。
それを引き起こしたニッポンで、「レベル7の原発過酷事故」を起こしたオノレの国を恥じて、
この日を恥の日にしよう、なんて誰か言った?

そしてその3年後のいま、事故は収束もしていないというのに、
なんと「忘れない」なんてキャッチフレーズが必要になるほどに忘れられようとしているらしい。
というか、精確に言うと、
「忘れない」キャッチフレーズは自然災害である東日本大震災の被災についてのことで、
原発事故と放射性物質については、どうも別。

汚染水がダダ漏れしっぱなしだろうが、
原発でトラブルが続こうが、
現場の作業員が高い被爆を続けようが、
廃炉への道筋なんて実は机上の論であろうが、
避難者が様々な困難に直面していようが、
仮設に住み続けざるをえない人が辛かろうが、
甲状腺がんの子どもが見つかろうが、
春の筍が今年も激しくベクレてようが、
少なくとも、「気にしない」程度には放射能については忘れるべきことにされている。

その証拠に、食べ物に放射性物質が含まれているという「当たり前」のことを
フツーに話題にできる人が今の日本にどんだけいる? 
中国製PM2.5や花粉のせいにしないでマスクを説明できる人がどんだけいる?

韓国船の事故で、パンツ姿で我先に脱出する船長の映像が
何度も繰り返しテレビに映し出された。
事態の深刻さの中で捉えられたこの責任者の醜態は、
爆発した原発から高濃度の放射線汚染水が漏れ出した現場の貯水槽に
新聞紙や紙おむつを投入する映像を見たときの気分を思い出させる。

え、今それなの? この事態に、それっきゃないの? 
紙おむつという滑稽さに笑うこともできず凍りつき、ふつふつと怒りがわくみたいな。
はしご車で水をかけるとか、バケツの水をぶちまけるとか、
素人が思いつくのと同程度のことしかなすすべがないらしい
絶望的に滑稽な現実を見せられた記憶がよみがえる。

韓国船は、欲にかられて規定以上の荷物をどっさり積み込んでいて、
それも固定するのに手間と技術と人手がかかるっていうんでちゃんと固定もせず、
だから当然傾いたら動いた荷物が戻らなくてバランスを失って沈んでいった。

工事費がかさむから土地も嵩上げせずに建設し、
古いけどもったいないから使い続けた原発は、深刻な事態を想定しちゃうと
それに備えるためにお金がかかるから、危ないことは起きないことにして稼動していた。
だから何が起きても「想定外」だからしょうがないってことになっている。

あの船会社が、いつだって荷物はたくさん積んでて、それで大丈夫だったのに、
今度だけは崩れちゃったんだよね、これって「想定外」、なんて言ったら、
それはもうボコボコどころの騒ぎじゃない。

事故対応のまずさの責任を取り、韓国の首相は辞任した。
朴大統領は事故対応の不手際について、遅いと言われながら2週間後に謝罪した。

福島の原発事故で、国策として原発政策を進めてきた政治家や、
「メルトダウンはしていません」と真っ赤なウソを言い続けた政治家や
東電の責任者は、ウソがばれても誰も辞任も謝罪もしていない。

テレビのコメンテータはパンツ姿の船長の映像を見ながら、
「これはもう殺人罪に等しいですよね」と盛大に非難している。まったくそのとおり。

ところで日本では、放射線に高濃度に汚染される地域がわかっていたのに知らせなかった。
某大学の人たちや東電社員はヨウ素剤を飲んでたのに、
ヨウ素がたっぷり流れ込んだ地域の住民には飲ませないし、逃げろとも言わなかった。
放射能がたっぷり降り注いだ日に、水汲みや買出しの列に子どもと一緒に並んでいた親たちが
いったいどんだけ自分を責めているか。

韓国船のアナウンスは、高校生たちに「動かないで船内にとどまるように」と
何度も何度も何度も指示を出していた。
そのアナウンスのさなかにパンツの船長たちは脱出していた。
高校生たちは、じっと指示に従っていた。
逃げろと言わなかったことは殺人罪に等しい!と、今日もコメンテータたちが力説している。

恥の日にもならなかった日本では、3年して、「まちに待ったふるさとへの帰還」とか、
「食べて応援」とか、復興を目指さなければ人にはあらずという見えない圧力が、
見えない放射線の恐ろしさに加わって、現実や事実を「見よう」とする人びとを
苦しめているのだけれど、その苦しみもまた、見えなくされている。忘却を迫られている。

韓国船事故のニュースを見る人は誰でも思う。
高校生たちが、アナウンスなんか無視して早く船外に出ていてくれてたらって。
こんな酷いアナウンスをし続けた者を憎むとともに、
「正しい」行いを守りきった高校生たちが、無念で、悔しい気持ちでいっぱいになる。
「恥知らず」な人の言うことを信じてはいけないのに、って。

原発事故以来、ず~っと高濃度汚染水を世界につながる海に流し続けても、
世界に「ごめんなさい」の一言も言わないで、
あろうことか「アンダー コントロール」なんて言っている。
量はもう少ないんだから気にしないでね、なんて感じで
大気中にも放射性物質を延々流し続け、
なんの責任もない膨大な数の人々に、
以前なら近寄ってもいけなかったレベルの放射性物質の除染をさせ続ける。

これが誰かが取り戻したらしい「美しい国」の姿であるらしいことが、
ほんとうに恥ずかしくてならない。

(東京在住 シーベルト)

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ある書には「日本には恥の文化」があると。しかし、その実態はどうであるかと問えば、「恥の上塗り文化」ではないでしょうか。事故直後から何度も繰り返されるプロパガンダ。更には「汚染水はコントロールされている!」発言など。
これに異を唱えない国民は恥知らずの国民ではないでしょうか。