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2012年10月16日火曜日

菅谷昭氏  「放射線被曝の子どもへの影響―チェルノブイリ原発事故医療支援の経験を通して―」

『日小医会報』 No.43 より

「今後の福島県内における学校がどうあるべきかについてであるが
チェルノブイリ事故の教訓の上に立てば極めて深刻な問題となり得る可能性を秘めていると予想される。

その鍵は,県内各地域の大気,土壌,食品などの広範な疫学調査,
とりわけセシウムやストロンチウムなど,比較的半減期の長い核種による土壌汚染の程度の詳細な調査であり,
もちろん,その結果を見ないと近い将来のことを的確に予測することはむずかしいかと思う。

残念なことに,国は罪なおこの点に関する詳細な汚染マップを公表しておらず誠に遺憾である。
これは,ベラルーシの軽度汚染地に暮らす子どもたちの憂慮すべき健康障害の現状から判断すると,
福島の子どもたちの長期にわたる低線量被ばくと密接に関係するからである。

政府は現在,除染対策に積極的に取り組んでいるが,
チェルノブイリのこれまでの状況から推測すると,早期の効果的な除染を期待することには,
り慎重に対応すべきである。

除染に過大な評価を寄せ,単に住民の早期帰還を促進する施策はいかがなものか。
とりわけ,十分野安全性を担保することなく,
子どもや若年者等を安易に帰還させることには大きな不安をおぼえる。

その意味において,ここで敢えて言わせてもらうならば,
個人的な見解にもなるが,国は学童の被ばくを軽減する方策として,
一定期間,彼らの非汚染地域への集団移住を考えることも一つの選択肢となり得ると考えられるがいかがであろうか。

本当に頭の痛い,悩ましくも,まさに厳しい現実的課題である。」

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